「新米の時期って忙しいよねー」
お米屋さんは晩夏になると、こんなことを言い出します。
普通の人がこの話を聞けば、なるほど「それらしく」聞こえます。
この時期の米屋の常套句、挨拶、定型句…とでも言いましょうか。
しかし…具体的にどのようなことで「忙しい」のでしょうか?
よーく考えてみてください。
秋になって急に米屋の販売量が増えるわけではありません。
仮に増えたとて、それは季節とは関係の無い話です。
仕入れについては、今までのラインナップを変更しないのであれば、「古米」から「新米」にシフトさせるだけです。
例えば「つや姫」。
消費者に人気のある銘柄で、米屋としても「売り切れ!」にするわけにはいかない商品の一つです。
ただ…古米→新米になったとて、特に改めて仕入れ先を探す必要はありません。
なぜなら「人気が高い」の裏腹で「珍しいお米」ではないので、米屋としてはいつもの仕入れ先に
「去年と同じで、頼むよ!」
で終わりだからです。
そうして「古米」を売りきった段階で「新米」に切り替えればいいだけです。
特に何かを変更する…例えば精米機を変更するわけではありません。
お米を入れる袋を変えるわけでもありません(新米シールを張りますが)。
…と考えれば、何か今までと違った動きがあるのでしょうか?
無いですよね??
だから…米屋は本当は忙しい「振り」をしているだけじゃ無いの???
…
まだ米屋を継いだばかりのころ僕は、そのように思っていました。
今考えると本当に恥ずかしい…。
いかに「深みのない仕事」をしていたか、分かります。
しかし今となれば…。
この意味が分かります。
いや、本当にこの時期、忙しいんです!!
具体的にはこんな仕事があります。
① 生産者に新米の予約を取る
卸業者さんで取る場合、年間で「予約をしなくともよい」と言うメリットがある反面、「最後まであるかどうかは分からない」というデメリットもあります(自分だけではなく色々なお米屋さんに販売しているため)。
一方でお米によっては「ぜっっっったいに切らすわけにはいかない!」というお米があります。そこで有効なのは産地と直接契約して、年間で使用する量のお米を発注することです。そうすることにより、お客様に安定してお米を供給することが出来ます。
しかし…だからと言って徒に米屋の在庫にしてしまったのでは今度は経費がかかってしまいます。
そこでまず…より正確な需給予測を立てる必要があるのです。
そう、予約のために電話だメールだFAXだ…もありますが、何よりもこの「需給予測」で結構時間がかかりますね…。
② 生産者と新米の価格を交渉する
お米は農産物ですから、毎年の生産量や需給量、また前年産の在庫に応じて値段は変わります。
今年はいったいくらか?
世間的な需給の動きとJAが設定した価格等を参考にして産地と交渉するのです。その内容に応じて契約書を交わす場合もありますので、その手間もあります(FAXを送るとか署名押印するとか契約書を投函するとか)。
さらに…価格交渉で電話をすると「今年の出来はどう?」といった情報収集も入りますので、いきおい長電話になるのです。そこで時間が…。
③ 「お米イベント」などの打ち合せが入る
今はコロナ禍ですからイベント自体があまりありませんが、普段であればイベントの打ち合わせ、新米キャンペーンの打ち合わせ、お米回りの商品販売の打ち合わせ…といった「お米回りのあれこれ」に関する打ち合わせが入ります。しかもたいていは突発的に…。
僕自ら「イベントやるか!」と動くもの…だけではなく、外部の方からの依頼に応じてお手伝いすることもあります(いやむしろ最近はそっちの方が多いかな??)。
④ 産地見学に行く
…まあこれは行かなくてもいいと言えばいいのですが(経費もかかりますし)、しかし個人的には
「お客様に売るものが一体どのような環境で、どういった人が栽培しているのか、この目で、肌で、足で感じないことにはお客様への説明がつかない!」
ということで、無理して行く場合があります。
この「無理して」とはこういうことです。
この新米の時期は…田んぼに稲穂があり、かつまだ稲刈り前の時期です。訪問するには「絵的」にも最高の時期です。
しかし…あまりに刈取り直前だと米屋がのこのこ行っても邪魔だけなので、そうなると「田んぼに稲が残っていて、かつ稲刈り前の時期」となると、勢い産地見学の時期は狭まります。なので訪問時期が集中して…「忙しい!」となるのです。
⑤ メディア等の取材が入る
お陰様で今から9年ほど前にヒルナンデスに登場して以来(もうそんなに経ちますか…。当時のメンバーから業界内では『再放送不可能な幻の回」と言われています(笑))、テレビやラジオ、また雑誌や新聞、ネットニュースなどで「この時期だけ」取材が入ります。
今年も順調に増えています。
そういった対応…だけならまだしも、テレビやラジオであれば実際に新米を準備しないといけませんし、雑誌については企画段階から相談を受けます。最終的には校正まで行います。
しかもこういったメディア系の仕事は「急ぎで!!」が本当に多い!(なんでなんでしょうね??)
なので本当にバタバタです💦
⑥なぜか飲食店からの問い合わせが多い
新米だから…というよりも世の中、決算上、下半期という企業が多いからなのか、9月~10月から店を始めるよ!というところ…意外と多いです。
新米の時期なのでお米の提案が行いやすい…と思いきや、意外とこの時期は弊社が年間で扱うレギュラーメンバーの新米が出ていない…言ってしまえば古米の最後の方の時期なので、結構提案には悩みます。
ざっとあげて…こんなところですね。
このブログも隙間時間に書いてます(笑)。
そう、新米の時期に忙しくなるというのは「米屋ならでは」であり、まさに私たちは「季節労働者」なのです。
こういった自然のサイクルに合わせて自分たちの仕事が忙しくなるというのは、日本人らしいい、四季を感じることができる素晴らしい職業なのかも…しれませんね。
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「楽しくなければお米ではない!」
有限会社 小池精米店 三代目 小池理雄(ただお)
五ツ星お米マイスター/東京米スター/6次産業化プランナー(中央サポートセンター登録)/社会保険労務士
東京都米穀小売商業組合所属/東京都ごはん区メンバー
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